SLAB

 SLABとは床板のことである。床板がなければ,2階以上の建物は使えない。基礎foundationは,大地の上に据えられるが,SLABは抜け落ちたりすることがある。

 カリフォルニアの南,サンディエゴの東にSLAB CITYと呼ばれる,SLABの瓦礫の上に建てられた街がある。

 

  • オテル・ド・ラ・ペ:トーゴにおける現代遺産へのもうひとつのアプローチ

    Hôtel de la Paix: An Alternative Approach to Modern Heritage in Togo | ArchDaily

    トーゴ共和国(トーゴきょうわこく、フランス語: République Togolaise)、通称トーゴは、西アフリカに位置する共和制国家。東にベナン、北にブルキナファソ、西にガーナと国境を接し、南は大西洋ギニア湾に面する。首都ロメである。

    オテル・ド・ラ・ペの代替案  イメージ ©スタジオNEiDa

    2024年末、首都トーゴの最近改装された植民地時代のパレ・ド・ロメの敷地内でイベントが開催されました。ロメ建築大学の学生たちは、学際的なStudio NEiDAがキュレーションした初のロメ建築交流会(RAL #1)に参加し、講演、映画上映、ワークショップ、建物見学などが行われました。並行展示では、同国の歴史上最も重要な建築が展示されました。このイベントの目的はトーゴの建築遺産を探求することであり、国境を越えて現代遺産保存について問いを投げかける旅の始まりとなるものでした。パレ・ド・ロメのような植民地時代の建物はより評価され、容易に修復されますが、オテル・ド・ラ・ペーのような放置された現代建築は、かつての活力を取り戻すために創造的でボトムアップのアプローチが必要です。

    トーゴは1960年にフランスから独立を果たしました。パレ・ド・ロメは1905年に旧ドイツ植民地政府下で総督官邸として建てられ、独立後も大統領官邸としての機能を継続しましたが、1990年代に荒廃しました。セゴンド・ギヨン建築事務所による5年間にわたる丹念な修復作業により宮殿は復活し、2019年に展示スペース、レストラン、教育スペースとして開館しました。最近保存された歴史的建造物として、RAL#1の理想的な場所であることは明らかでした。

    画像ギャラリー

  • 南町邸 / ルーヴィス

    南町邸 / ルーヴィス

    南町邸 / ROOVICE |アーチデイリー

    © 中村明

    • 住宅改修 エリア:112 m² 2025   東京、日本
    • 根五郎美和キュレーション  ルーヴィス 製造元:オスモ・エーデル、田島
    • リード建築家: ジュリア・タヴェルナ、高橋光一(ルーヴィス)

    建築家によるテキスト説明。 その家は何世代にもわたり同じ家族のものであり、日常や記憶の層を静かに積み重ねてきた。新しい所有者は海外に住んでいますが、彼は譲り受けた場所に強い愛着を感じていたため、手放すことを選びませんでした。売却するのではなく、ROOVICEの「カリアゲ」フレームワークを通じて家を再利用する決定がなされました。このシステムは空き家を改装しサブリースし、所有者が管理の負担なしに物件を保存できる仕組みです。この方法により、家は再び居住可能となりつつ、そのアイデンティティと歴史を保つことができました。

    プロジェクトはすでに存在しているものを慎重に読み解くことから始まりました。家を完全に再定義するのではなく、介入はそれを制約するものを取り除くことに焦点を当てました。1階のキッチンは、もともと最も深く暗い隅に押し込まれていた。周囲の仕切りを解体することで、再び日常生活の中心に戻されました。新たにオープンしたキッチンは、かつての畳部屋の中にあったダイニングエリアに面しており、庭に面しています。壁の撤去により構造梁が露出し、新しいカウンターを枠組みとして使われ、囲いを再び導入することなく微妙な境界線を作り出しました。必要に応じて、既存の構造物の横に新しいリサイクルビームを挿入し、補強部分が隠すのではなく見えるようにしました。

    小さく分かれた部屋の連続は徐々に解き放たれていった。キッチンへ続く狭い廊下はメインスペースに吸収され、二つの畳の部屋が一体化してチーク材の床で連続したリビングとダイニングエリアを形成しました。元の障子は修復され、内装と庭園の柔らかな区切りが保たれました。

    これらの部屋の天井は取り除かれ、高さの異なる層状構造が露出しました。これらの違いを平和化するのではなく、プロジェクトはそれらを受け入れています。キッチンカウンターの上を走る、細いパネル張りの帯と統合照明が導入され、移行を促しました。追加の照明ポイントは梁に直接組み込まれ、将来の居住者が自分の器具で空間を適応できるようにしました。

    家のあちこちに、ある種の存在感を持つ要素が残されていました。独特の特徴を持つ元の黄色いキッチンは今も残っています。バスルームでは、引き戸とTOTOシンクキャビネットがそのまま残され、新しいユニットバスが導入され、過去を消し去ることなく機能的にアップデートされました。廊下では、元の二重トイレのレイアウトがより実用的な配置に再設計されました。単一のトイレと二次の洗面台エリアが組み合わされ、収納スペースへと伸びており、そこは現在ランドリールームとしても機能しています。

  • ケレ建築のセネガルのゲーテ・インスティテュートが西アフリカの文化交流のランドマークとしてオープン

    Kéré Architecture’s Goethe-Institut in Senegal Opens as a Landmark for Cultural Exchange in West Africa

    Kéré Architecture’s Goethe-Institut in Senegal Opens as a Landmark for Cultural Exchange in West Africa | ArchDaily

    Goethe Institute Senegal by Kéré Architecture, 2026. Image © Sylvain Cherkaoui

    ケレ建築によるセネガルのゲーテ研究所、2026年。画像 © Sylvain Cherkaoui

    Written by Antonia Piñeiro アントニア ピニェイロ 2026 年 4 月 16 日

    2022 年 2 月、ケレ アーキテクチャーによって設計されたダカールのゲーテ インスティトゥートの建設が始まりました。 1978 年からセネガルに存在するゲーテ インスティトゥートは、この新しい建物によってドイツ、セネガル、西アフリカの文化的つながりを強化するマイルストーンを迎えています。アフリカ大陸初の専用ゲーテ・インスティテュートとして、創造産業の支援と知的交流の促進への長期的な取り組みを具体化しています。 2026 年 4 月 16 日から 18 日まで、ゲーテ インスティトゥートは新本部の落成を記念する一連のイベントを開催します。

    Goethe Institute Senegal by Kéré Architecture, 2026. Image © Sylvain Cherkaouiケレ建築によるセネガルのゲーテ研究所、2026年。画像 © Sylvain Cherkaoui

    2022 年プリツカー賞受賞者であるブルキナファソの建築家フランシス ケレによって「交流、イノベーション、持続可能な協力のためのプラットフォーム」として設計されたこのセンターは、地元の材料と生物気候原理の使用を通じて、伝統的な職人技と材料の革新を組み合わせています。この建物は、大西洋、シェイク アンタ ディオプ大学、レオポルド セダール サンゴール美術館に近い 2,700 平方メートルの敷地にあります。このデザインは、周囲の環境に合わせて形作られ、地元のラテライトから作られたレンガで構築された現代アフリカ建築を体現しています。

    Goethe Institute Senegal by Kéré Architecture. Section, 2022. Image Courtesy of Kéré Architecture

    ケレ建築によるゲーテ・インスティテュート・セネガル。セクション、2022 年。画像提供:Kéré Architecture

    Goethe Institute Senegal by Kéré Architecture. Ground floor plan, 2022. Image Courtesy of Kéré Architecture

    ケレ建築によるゲーテ・インスティテュート・セネガル。 1 階平面図、2022 年。画像提供:Kéré Architecture

    この 2 階建ての建物は、Rebuild.ing のドイツ人エンジニア、ダカールを拠点とする Worofila の建築家、地元の企業や職人らの緊密なコラボレーションの結果です。生活と対話のための空間として構想されたこの施設は、中央のバオバブの木を中心に構成されており、アフリカの知識を紹介する図書館など、学習、創造性、交流に特化した多目的スペースを備えています。 1 階には講堂、カフェテリア、図書館があり、2 階には教室とオフィスがあります。アクセス可能な屋上にはイベント用の追加スペースがあります。 2026年4月16日から17日まで、ダカールのゲーテ・インスティトゥートは、講演、パネルディスカッション、ガイド付きツアーを含む一般公開プログラムを提供します。

  • エクアドルの現代建築: 素材、環境、文化を結びつける

    Contemporary Ecuadorian Architecture: Connecting Materials, Environment, and Culture

    エクアドルの現代建築: 素材、環境、文化をつなぐ |アーチデイリー

    Casa Toquilla, RAMA Estudio, Portete Island, 2021. Image © Francesco Russo

    カーサ・トキージャ、RAMAエストゥディオ、ポルテテ島、2021年。画像© Francesco Russo

    • Written by Agustina Iñiguez アグスティナ イニゲス  Published on April 14, 2026 2026 年 4 月 14 日

    エクアドルの領土には、太平洋岸からアンデス山脈の頂上、広大なアマゾン熱帯雨林、そして火山のガラパゴス諸島に至るまで、驚くほど多様な景観が広がっています。国の各地域は、さまざまな環境、文化、社会的背景に反映された独自の特徴を示しています。ラテンアメリカの建築は先祖代々の豊かな伝統、土着の建築技術、地元の材料に根ざしていますが、現代のエクアドル建築は、これらの要素と実際の需要を融合させた進化するアイデンティティを表現しています。伝統と革新、地域資源と現代技術は、社会的責任と美学とともに、自然環境、都市状況、社会的背景と相互作用します。

    デザイン、環境、文化の相互作用を通じて、現代建築は何百万もの人々の生活を形作り、私たちが住む空間内で経験を生み出し、記憶を保存します。エクアドルの建築家は、地域社会への奉仕、教育や文化的目的の支援、あるいは個人のニーズへの対応など、分野の境界を拡大するよう努めています。創造的なソリューション、技術スキル、文化的感性によって定義される建築に関する議論に直面して、材料を使った実験はコミュニティ間のつながりを構築するのに役立ち、単なる環境上の利点以上のものを提供します。

  • 軽く建てる:季節的浸水のための建築

    2026 0407 Pakistan Flood  Arch Daily

    洪水ゾーンにおける照明の建設:季節的な浸水のための建築 |アーチデイリー

    Ganvie_2018の空撮図。画像©:ビクター・エスパダス・ゴンザレス

    ナンヤ・ナヤック                         2026年4月6日公開

    洪水は驚きとして訪れません。洪水は再び現れ、同じ増水した川とモンスーンの空をたどり、地面を緩め、本来抵抗するはずのなかった家々に入り込みます。壁は失われる前にほどかれ、材料は流される前に集められ、構造物は破壊ではなく順序を示唆する馴染みのある方法で再建されます。毎年水が戻る風景では、生き残りは再び始める能力によって定義されます。

    バングラデシュ氾濫原、ブラマプトラ流域、メコンデルタでは、浸水は季節的に確実に起こっています。世界銀行気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの機関の報告は、洪水を曝露や被害で捉え、抵抗力と耐久性で成功を測ることが多いです。しかし、毎年水没する地域では、こうした指標は問題の本質を部分的にしか説明していません。地盤自体が固体と液体の状態を行き来します。地盤が固定されているかのように建設することは、それを定義する条件に反して設計することになります。

     これに応じて、建築は恒久性ではなく可逆性を重視して調整された異なる意思決定のセットで機能します。材料は交換しやすく、構造システムは分解しやすく、空間配置は最小限の労力で移動できるように選ばれます。バングラデシュのクディ・バリ住宅システムはこの論理を明確に示しています。軽量の竹枠は構造荷重を軽減し、継ぎ目で構造を分解し、建設は専門的な工程ではなく現地の労働に依存しています。一見控えめに見えるものが、実は非常に精密です。すべての決定は将来の解体の瞬間を予期しています。

     クディ・バリ/マリーナ・タバスム建築事務所。画像:©アシフ・サルマン

    Fleinvær Refugium / TYIN Tegnesue + Rintala Eggertsson Architects.イメージ©:パシ・アルト

    浮かぶ竹屋/H&P建築事務所。画像©レ・ミン・ホアン

    Floating House/ CTA | Creative Architects. Image © CTA

    Pono Colony – August 2022. Image Courtesy of Heritage Foundation of Pakistan

    Khudi Bari, Vitra Campus / Marina Tabassum. Photo © Julien Lanoo

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渡辺菊眞 宙地の間01

宙地の間

地球環境時代のモデル建築

渡辺菊眞

   

Ⅰ.グローカル(地球-地域)建築

[1] グローカル(地球-地域)建築とは

 グローカル(地球−地域)建築は、地球環境とその内側にある地域環境に二重に適応する建築( architecture adapted to both local and global environment )である。適応はadaptであり、順応(あわせる)と改造(つりくかえる)の意味をあわせもつ。地球と地域の二重環境に順応しつつ、よりよい環境を導出するのがグローカル(地球−地域)建築である。

 なぜ地球-地域という二重環境なのか。地域は、私たちにとって馴染みの深い身近な場所である。住む家があり、家を都市が包み、その都市を自然が支える、その総体である。地球は太陽系の惑星・地球である。身近な場所である地域と太陽系の惑星・地球。この二つを並べただけだとそれぞれが違った場所のように感じてしまう。しかし地域は地球上の唯一の場所である。地域では山の端や水平線から太陽が昇り、空を巡って沈む。この時に地域と太陽系の惑星・地球の重なりを感じることができる。「菜の花や月は東に日は西に」、近景に地域の季節の何げない風景があり、その背景に太陽系の情景が描かれる。与謝野蕪村が詠んだ風景はまさに地球-地域の風景である。地域環境たる「ここ」の背後に太陽系の惑星・地球が重なり、重なりの向こうに果てなき「かなた」を感じる。そういった地球-地域環境に私たちは住む。それは地球人たる私たちが生きる原点ではないか。私はその原点に立ち還りたい。地域環境を想うことは地球環境を想うことであり、地球環境を想うなら地域環境を想わなければならない。だからこそグローカル(地球-地域)なのである。

 

[2] 生きられる空間、水平と垂直、地域と地球

 地球-地域環境に生きているのは私たちであり、私たちは人間である。では人間が「生きられる」のはどんな場か。その問いに回答しつつ地球-地域という二重環境の意味を深堀したい。

 人間が十全に生きられる空間は二重をなす。上田閑照は人間存在の根本構造を「二重世界内存在」だとする[1]。人間が住む最大の場所は世界であり、その背後には虚空という何もない非場所が重なる。人間はからっぽに支えられた世界に生きている。これが「二重世界内存在」である。絶対的な無のなかにあるからこそ全体性ある世界の輪郭が定まって世界を大切に思って生きるわけである。とはいえ、これは純粋な観念であって「絶対的な無」と言われてもピンとは来ないだろう。ただし、日常を超える「何か」と出会い、その時に日常を大切に思うというのであれば誰しもが思い当たるのではないか。日常を超える「何か」を感じられる場所として聖地がある。深い森に佇みつつ神のおわす山をはるかにのぞむ神社境内で自ずと祈りを捧げたくなること、断崖絶壁に屹立するお堂の情景に思わず身が引き締まること、こうした聖地の体験ののちに住まいのある場に帰還する時の安堵感。これがわかりのよい二重性である。聖地は特殊な空間であるが、もっと身近な場所でも「何か」を感じることはある。ある時に見た夕暮れがいつもとは全く違った色合いにみえて別世界に迷い込んだ感覚に襲われたのちにハッとして我に帰ること、そんな経験は誰だって思い当たるはずである。このような日常を超えた経験があるからこそ普段の生活空間のまとまりやかけがえのなさを改めて感じるのである。このことは20世紀に人間存在をあらためて問うた、マルティン・ハイデッガー、オットー・フリードリッヒ・ボルノウ、ミルチャ・エリアーデらの論考に共通にみられる。人間が存在するためには、「日常的な世界」と「日常を超えたところ」が重なり合う場が必要なのである。

 「日常的な世界」と「日常を超えたところ」。これは「水平」と「垂直」という言葉に置き換えられる。クリスチャン・ノルベルク・シュルツは人間が生きられる空間を「実存的空間」とし、その構造を示している[2]。実存的空間は3つの構成要素、①中心(center)と場所(place)、②方向(orientation)と通路(path)、③区域(area)と領域(domain)からなる。中心から放射状に通路が伸び、円盤状の領域が描かれる。場所を起点に通路を介して領域に至る。これは水平的な広がりである。その一方で場所(中心)には垂直軸が立つ。ここにみる水平的な広がりが「日常的な世界」であり、中心を貫く垂直軸は「日常を超えたところ」へ向かう軸である。人間が生きられる空間では「日常的な世界」が水平面をなし、その中心に「日常を超えたところ」に向けて垂直軸がつらぬく。とはいえ、このままでは具体的な空間をイメージできない。

 ここで改めて、地球-地域における水平と垂直を見ていく。地域は人間が過ごす身近な場所である。人間が住む家があり、家がたつ都市があり、都市をつつむ自然景観がある。こういった地域を地球が包含する。地球は水平的な広がりの最大領域である一方で、山際の空の広がりや大海原の果てに描かれる水平線を目にするとき、そういった自然景観のさらに向こうに「かなた」を感じることがある。この経験は空や海といった目に見える自然景観を起点としているが、そこで感受されるのは「かなた」という「現実を超える何か」である。自然景観の向こうに「かなた」を感じる経験は地球-地域環境で自身が垂直につらぬかれる経験である。地球は水平世界の最大領域であり、「かなた」を想うことで垂直な開けを導く場でもある。地球が水平と垂直をむすびつけて人間存在が成立する。本書で地球−地域という二重環境を提示した最大の理由はここにある。

[3] 建築にみる水平と垂直の二重性と、グローカル(地球-地域)建築

 人間が生きられるのは、水平と垂直が重なる場である。水平は地域(家、都市、自然)から地球まで広がる領域であり、地球が垂直な開けを導く。では、人間を容れる器たる建築には何が求められるのであろうか。言うまでもなく人間が「生きられること」をサポートすることが建築の役目であろう。これは建築の根源的な役目である。したがってこの役目を果たす姿を見るためには建築の始まり(起源)に遡る必要がある。

 森田慶一は「建築論」において、建築起源の二元説に触れている[3]。二元なので根っこが二つある。その一つが「事物的なシェルター」であり、もう一つが「超越的なシンボル」だという。前者は洞窟住居のように厳しい自然から身を守る建築であり、後者はストーンヘンジのような存在である。これは原初のカオス(混沌)にシンボルを配置して秩序あるコスモス(宇宙)を獲得するための建築である(Fig Ⅰ-1)。

FigⅠ-1 ストーンヘンジ 出典=Andreas Volwashsen『COSMIC ARCHTECTURE IN INDIA』

 根っこが二つとはいえ、両者は相補的な関係を持っていたはずである。事実、ストーンヘンジがたつ場の近隣に人々が住まう場も設定されていた。カオス(混沌)をストーンヘンジがコスモス(宇宙)に転じることで人々は安心して居住できるわけである。人々は日々暮らす場を基盤としながら時にストーンヘンジに祈りを捧げてコスモス(宇宙)を維持していく。

 このような建築の二元的な在り方は起源に限定されることではない。人が社会的存在となって生業を持つと、漁村、農村などの生業に応じた住居群配置とその単位としての住居が形成される。それが舟屋、散居、町家などの地域型住居(生業に応じたシェルター)となる。また、集落・都市には神社、寺院、墓地といった聖なる空間が配置される。原始の巨石とは違うが、聖地という象徴的な空間が場に秩序をもたらす。家(シェルター)があつまって村となり、村を支える自然の大切な場所には神社などの聖地が配される。聖地はその象徴的な構え(シンボル)によって垂直な開けを導く。シェルターを中心とする場と超越的なシンボルの双方があって、ふたつでひとつの全体=「生きられる空間」=コスモス(宇宙)が成立する。

 香山壽夫は建築起源のシェルター一元説を否定する。原始の人間がつくりあげた最初の建築は単なるシェルターではなかったことを人類学者のルロワ・グーラン、宗教学者のミルチャ・エリアーデ、建築家のルイス・カーンの言説を援用しながら示している[4]。住居をつくる際に要求されることとして「宇宙の秩序を与える」必要が含まれていること(グーラン)、「住居の建築様式において、宇宙的な象徴が強調される」こと(エリアーデ)、「建築は、大いなる超越に対する高遠な試みであって、最高の宗教的行為である」こと(カーン)、これらの言説は住居と建築が単なるシェルター以上の存在であることを示している。こういった前提にたち、香山は「建築は、私たちの平凡な日常の行為から、根源的な祈りにまで、空間的に働きかけて」くると主張する。

 このことを如実に示すのがプエブロ・インディアンによる最初期の住居、ピットハウスである。これは竪穴式住居であり円形平面に4本の柱をたてて中央には火を焚く場、そのそばに大地に眠る先祖と会話するための小さな穴がある。大地に眠る先祖の霊と立ちのぼる煙が天へと抜ける穴が垂直軸をなす。シェルターと祈りがひとつとなった空間でありコスモス(宇宙)をなしている(FigⅠ-2)。

FigⅠ-2 ピットハウス 出典=香山壽夫『建築意匠講義』

 プエブロ・インディアンの集落はピットハウスを起点とするものの、のちに住居と祈りの空間は分化していく。具体的に住居は竪穴から地上に上がり段状の集合住宅となり祈りの空間は地下にとどまり「キーヴァ」という礼拝場となる。ここでは、ふたつでひとつの全体がコスモス(宇宙)をなしている。

 建築の起源は、ピットハウスのようにシェルターとシンボルがぴたりと重なりあいコスモス(宇宙)を形成するものだったのかもしれない。ただし、住まう場で祈りをささげつつ、そのそばにシンボルを配して村という共同体全体をコスモス(宇宙)にする姿もまた建築の起源であろう。日常を過ごす水平世界と祈りを捧げて垂直な開けを得ること、その両者をむすんでコスモス(宇宙)をもたらすことが建築の起源であり根源なのである。

[4] 環境における二つの位相:自然環境と文化環境

 環境は一つの全体であり部分に分解できるものではない。しかし、全体のなかでの表れとして便宜的に区別することは許されるであろう。本書ではその表れを二つの位相で捉えている。一つが自然環境であり、もう一つが文化環境である。自然環境は、地勢、天候、生物などを含む状況のことである。天候(気候と天気)は建築環境工学において熱、光、風といった要素に分解され、制御する対象となる。文化環境は、地域の風土・歴史に裏打ちされた周辺空間の様態のことである。建築学において都市計画や農村計画の研究対象領域となる。

 21 世紀の幕開けに向けて2000年に建築関連5団体により「地球環境・建築憲章」が宣言された[5]。そこでは「持続可能な社会を実現していくことが緊急の課題」であるとし、「建築はそれ自体完結したものとしてではなく、地域の、さらには地球規模の環境との関係においてとらえられなければ」ならないとしている。これは地球-地域という二重環境に建築が適応することの必要性を問うものである。この憲章では創造すべき建築に以下の5つの指針が与えている。

建築は世代を超えて使い続けられる価値ある社会資産となるように、企画・計画・設計・建設・運用・維持される。(長寿命)

建築は自然環境と調和し、多様な生物との共存をはかりながら、良好な社会環境の構成要素として形成される。(自然共生)

建築の生涯のエネルギー消費は最小限に留められ、自然エネルギーや未利用エネルギーは最大限に活用される。(省エネルギー)

建築は可能な限り環境負荷の小さい、また再利用・再生が可能な資源・材料に基づいて構成され、建築の生涯の資源消費は最小限に留められる。(省資源・循環)

建築は多様な地域の風土・歴史を尊重しつつ新しい文化として創造され、良好な成育環境として次世代に継承される。(継承性)

 5項目のうち、「自然共生」「省エネルギー」「省資源・循環」の3つは自然環境に適応する建築の在り方が、「継承性」では文化環境に適応する建築の在り方が示されている。なお、「長寿命」は、価値ある社会資産(ストック)になりうることを目指しており、自然と文化双方にまたがる評価軸である。このように、「地球環境・建築憲章」では地球環境時代の建築が自然環境と文化環境の双方に適応することの重要性を説いており、本書が提示する環境の2位相の妥当性を裏付けている。

Ⅰ 註


[1] 上田閑照 『場所 二重世界内存在』 弘文堂 1992

[2] ノルベルク・シュルツ 『実存・空間・建築』 加藤邦男訳 鹿島出版会 1973(原著1971)

[3] 森田慶一 『建築論』 東海大学出版会 1966、pp143-167

[4] 香山壽夫 『建築意匠講義』 東京大学出版会 2009、pp2-23

[5] 『地球環境・建築憲章』 建築関連5団体(日本建築学会,日本建築士会連合会,日本建築士事務所協会連合会,日本建築家協会,建築業協会) 2000


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