コルアーキテクツ 髙橋渓
神戸で建築に興味がある人たちが集まって語ることのできる場をつくりたいと思いから、神戸の建築家有志でKobe Architectural Study(KAS)という活動を始めたのが2025年8月。「地域の歴史、場所性を多角的に読み解き、社会における共同体や公共性について洞察を行うこと。」という活動理念を掲げ、2026年3月31日までの8ヵ月間で全30回の研究会を開催している。
https://www.instagram.com/kobe_architectural_study

神戸と言えば、古くから物流と文化が行き交う港町として発展し、特に明治の開港以降は、西洋文化を受け入れながら、日本有数の国際港湾都市としてのイメージが強い。海と山が近接し、横に長い独特の地形も相まって、海から渡ってきた多文化が混ざり合い、多様な価値観や生活文化を育む風土が残る。歴史的には幾度もの大水害(阪神大水害、1938年)、戦災(神戸大空襲、1945年)によって都市構造の転換を経験してきた都市でもある。特に1995年の 阪神・淡路大震災は、多くの建築や人々の暮らしを失った一方で、人と地域とのつながり、社会におけるコミュニティ形成の重要性と課題をいち早く浮かび上がらせ、これからの建築と都市、共同体と公共性を語る上で神戸という場所は重要な意味を持つと考えている。
KASの会場はJR神戸線(東海道線)の元町から神戸駅間の高架下にある元町高架通商店街(通称モトコ―)の元立呑み居酒屋の空店舗である。戦後闇市を発端としたモトコ―は神戸のサブカルを象徴し、長きに渡り市民に親しまれた特異な空間だったが、神戸の都市構造、経済構造の変化による高架下店舗のシャッター街化が顕著となり、高架躯体の老朽化を理由にJRによる解体・再整備が既に始まった。それを機にモトコ―の記憶と価値を次世代に受け渡すアートプロジェクト「MOTOKOLOGY」が同時期(2025年7月)に立上り、KASはその参加メンバーの一員として一角の空テナントを活動スペースとして間借りすることでスタートした。
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202603/0020142108.shtml

これまで開催されたKASは大きく3つのフェーズに分けて進めてきた。初期フェーズでは、各回で個別テーマを設定し、例えば「神戸と建築(#01‐#03)」、「居場所(#04)」、「地形(#05)」、「多文化(#06)」、「最近どこ行った?(#08)」など、各テーマに沿った写真を参加者(参加者の属性も様々)が持ち寄り、幅広く議論を重ねていくことで、参加者の都市と建築における視野や関心を広げるから始めた。さらに、中期フェーズでは徐々に神戸の街で活躍する多領域なプレイヤー(人)へと焦点を移し、モトコロジープロデューサーの田村圭介氏(#11)、兵庫県立美術館学芸員の中谷圭佑氏(#13)、若手建築家の上野天陽氏、中野照正氏、世界西垣感氏、西垣聡汰氏によるトーク合戦(#17)、都市・建築史研究者の村上しほり氏(#18)、メディアアーティストの浅井宣道氏(#19)をゲストスピーカーとしてお呼びし、アート、美術、地域運営、戦後都市史、地域の経済循環という、建築分野とは少し離れた角度から神戸の都市を捉え直し、より実践的な議論の場となった。そして、いよいよ後期フェーズでは神戸を拠点に活躍する建築家たちをゲストにお呼びし、神戸の地域性、風景、公共性、哲学、教育をキーワードに自身の実作紹介から神戸における建築と都市の在り方について様々な議論を行った。建築家には今津修平氏(#20)、阿曽芙実氏(#21)、島田陽氏(#22)、畑友洋氏(#23)、遠藤秀平平氏(#24)、槻橋修氏(#25)、魚谷剛紀氏(#26)と神戸を代表する豪華なメンバーが名を連ねる。
さらに議論の視点を建築から都市やコミュニティに拡げ、社会建築学と建築社会学という視点から布野修司氏×松村淳氏(#27)による対談、ポートアイランド・リボーンプロジェクトを担当する藤村龍至氏(#28)から神戸が描く近未来の風景、阪神大震災以降に神戸でコミュニティアーキテクトを実践する松原永季氏(#29)へとバトンが繋がれている。

KASではこれまでの神戸の歴史や文化の積層の中に身を置き、建築や都市を通して、「地域性を再解釈」することをこれからも続けていきたいと思う。そして、さまざまな領域を横断しながら、多角的な議論と実践を積み重ね、それらをアーカイブすることで、地域に根ざした「ローカル実践知の集合体」の形成を目的としている。さらに、そこから「神戸という都市で、何を実践し、どう生きるか。」という個の問いへと繋がっていくことを期待している。




コメントを残す