建築少年たちの夢Part1 進撃の建築家たちPart2 建築家Xたち Part3
建築家Xたち 00 建築家は何を目指すのか?
布野修司
建築少年たちの夢
東日本大震災直後の2011年6月,『建築少年たちの夢 現代建築水滸伝』(彰国社2011)という本を上梓した。
元になったのは『建築ジャーナリズム』誌における「布野修司の現代建築家批評 メディアの中の建築家たち」という連載であった。2008年1月から2010年12月まで,3年,全36回にわたる連載で,とりあげた建築家は,安藤忠雄,藤森照信,伊東豊雄,山本理顕,石山修武,渡辺豊和,象設計集団,原広司,磯崎新の9人(組)の建築家(集団)である。各建築家(集団)について,軌跡,理論,手法の3回(磯崎新については6回)書き,序章として3回(01メタボリズム批判の行方 ポストモダン以後,02誰もが建築家でありうる ポストモダン以後,03タウンアーキテクトの可能性),終章として3回(34建築の持続 それぞれの役割 建築家の生き延びる道,35建築の継承 世代交代 建築の新しい世紀 建築家の生き延びる道,36建築の根源 建築の新しい世紀 建築家の生き延びる道)を含めてまとめたものであった。磯崎新(1931~2022)から藤森照信(1947~)まで,基本的に存命の20世紀前半生れで,メデイアで発言を続けてきて著書もあるの建築家(集団)をとりあげたのであった。もちろん,他に取り上げるべき建築家は少なくなかったが,身近に見聞きし,読んできた,そして影響を受けてきた建築家を関心に従ってとりあげたということである。日本の戦後建築の歴史を、日本を代表する建築家の足跡を軸に自らの個人史にも引きつけながら辿ろうとしたのが『建築少年たちの夢』である。後は、続く世代に期待したい、新たな建築の未来を「建築少年たちの夢」にかけたい、というのが『建築少年たちの夢』に込めた思いであった。

進撃の建築家たち
8年後,『進撃の建築家たち 新たな建築家像を目指して』(彰国社2019)という本を出版することになる。その元になったのも『建築ジャーナル』誌の連載(2016年9月~2018年12月まで28回)である。「進撃の建築家」というタイトルも、「3・11以後の建築家とは。自分語りと重ねつつ、これまでにない建築家像を実践する新世代に焦点を当てる」という方針,リード文も編集部のものである。
「自分語り」に拘ると内輪話に堕す。特に若い世代というと限られるから自ずと身内話になりかねない。そこで,これを機会に若い建築家のネットワークを広げる方向で考えたいと思った。それぞれの建築家が、誰の仕事に注目しているか、誰をライバルと考えているか、「進撃の建築家」の輪をつないでいくというのが方針であった。とはいえ、そうそう若い建築家に出会う機会があるわけではない。そこで頼りにしたのは,日本建築学会で立ち上げたWeb Magizine『建築討論』(初代編集長2014年~2017年 No.01~13)の作品小委員会のメンバーであり、日頃接する学生たちである。滋賀県立大学の談話室(『雑口罵乱』01~10‐2007~2017)で出会った建築家たちは連載の幅を広げてくれることになった。とりあげた建築家たちは30数名である。目次は以下のようである。
Ⅰ 地球・地域・コスモロジー
①渡辺菊眞 地球=地域のデザイン アジア・アフリカの大地から
Ⅱ 社会・建築・運動
②藤村龍至 建築まちづくりの最前線 運動としての建築
③大島芳彦+ブルースタジオ 「物件」に「物語」を! 「住」を「文化」に!まちをまるごと再生する魔法
Ⅲ 建築・形態・都市
④平田晃久 〈からまりしろ〉の探求 生命論的建築を目指して
⑤伊藤麻理 公共建築に哲学を 挑戦し続けるコンペ
⑥アルファヴィル 竹口健太郎・山本麻子 フォルマリズムの探求 異化・同化・転化
Ⅳ 職人・素材・技能
⑦森田一弥 土の探求 左官技術のトランス・ナショナル
⑧齊藤 正 善根の精神 塩飽大工衆の再生へ
Ⅴ 地域へ、そして地域から
⑨「鯨の会」の仲間たち 八巻秀房・飯島昌之 アーキテクト・ビルダー、地域住宅工房
⑩大井鉄也 木之本から/近江環人の行方 レトロ・フィット建築の体系
⑪丹羽哲矢 組織と地域の間 C&Dの方へ
⑫水谷俊博・水谷玲子 武蔵野のベース・キャンパス 歌って踊れる建築家!?
Ⅵ 町家 集まって住むかたち
⑬魚谷繁礼・魚谷みわ子 「京町家」再生というプロブレマティーク
⑭山本雄介 ⑮松本大輔 ⑯青山周平 ⑰岡本慶三 ⑱池上 碧 北京建築修業、そしてデビューへ
Ⅶ 空間資源の再利用
⑲岡部友彦 「寄せ場」から世界へ ソーシャル・ファイナンスト・デザインの可能性
⑳モクチン企画 連勇太朗・川瀬英嗣・中村健太郎・山川 陸 木賃アパート改修戦略 ソーシャル・スタート・アップの実験
Ⅷ 「建築」の脱構築
㉑ 403architecture[dajiba] 彌田徹・辻琢磨・橋本健史 すべてはコンテクストである Σ(ネットワーク∩ネットワーク)へ
㉒ ツバメアーキテクツ 山道拓人・千葉元生・西川日満里・石榑督和 あらゆる場所に巣をつくる ソーシャル・テクトニクスの構築
㉓ 香月真大 頑張れ!ケンチク・ボーイズ キュレーター・アーキテクトを目指して
Ⅸ 自立建築
㉔ 芦澤竜一 野生の建築 オートノマス建築の可能性
㉕ 岡 啓輔 究極のRC 建て続けること、そして壊されないこと
意識したのは、『建築少年たちの夢 現代建築水滸伝』で取り上げた建築家たちの仕事との関連である。 東日本大震災が日本を襲ったのは『建築少年たちの夢』の二校を終えた直後であったが,「あとがき」には次のように書いている(2011年4月11日付)。
「2011年3月11日、14時46分、東日本大震災が日本を襲った。M9・0、史上最大規模の地震である。本書の二校を終えた直後であった。・・・その後一月を経て、福島の第一原発が未だ収まらない。日本は、あるいは世界は人類始まって以来の経験を共有しつつある。2011・3・11は少なくとも日本の歴史にとって永久に記憶される年月日となるであろう。・・・敗戦後まもなくの廃墟の光景がまず浮かんだ。振り出しに戻った、という感情にも襲われた。そして、戦災復興からの同じような復興過程を再び繰り返してはならないと震えるように思った。戦後築きあげてきた日本列島のかたちがそのまま復元されることがあってはならないのではないか。エネルギー、資源、産業、ありとあらゆる局面で日本を見直し、再生させていく、世界に誇れる建築と都市が新たに創造されなければならない。そのために必要なのが「建築少年たちの夢」である。建築を学ぶものはすべてが日本再生のまちづくりに取り組もう。そして、現場で深く考えよう。そこに建築の未来を見出そう。次の世代として、世界を股にかける建築家が生まれるとしたらその中からである。それは夢などでは決してない。」
そして,『進撃の建築家たち』のあとがき(おわりに)には次のように書いた。
「しかし、3・11から八年、事態は、期待していたようには動いてはいない。とりわけ「フクシマ」は止まったままだ。・・・・・/大災害が露わにするのは、社会に潜在する諸対立、諸差別の構造である。被災地においてそれを一気に克服することはそもそも容易ではない。復興バブルの影響がたちまち日本全体に及んだことが示すように、問題は、被災地にのみあるのではない。あらゆる地域の建築家の日常の仕事のなかにある。それにしても、次々に大災害が日本列島を襲う。気候変動、地球環境問題も含めて、津波被害、原発、すべて人為すなわち人の営みがもたらしたことでもある。
エネルギー、資源、産業、ありとあらゆる局面で日本を見直し、再生させていく、世界に誇れる建築と都市が新たに創造されなければならない、戦災復興からの同じような復興過程を再び繰り返してはならない,戦後築きあげてきた日本列島のかたちがそのまま復元されることがあってはならないのである。
しかし、露わになってきたのは、建築産業界のアンシャン・レジーム((旧態依然たる構造)である。重層下請構造の問題は、建設業界だけの問題ではないが、正規―非正規、外国人労働者といったより複雑で鵺的な支配構造が成立している。・・・ 「建築家」の存在は、ほとんど建設産業の巨大な構造に埋没しつつあるかのようである。「進撃の建築家」たちが挑んでいるのは、この巨大な構造である。・・・ 」

アーキテクト/ビルダー(「建築の設計と生産」)研究会
2015年4月,四半世紀ぶりに東京に帰ってきて、斎藤公男(代表)、金田勝徳、神田順、和田章によって立ち上げられたA-Forumに参加する機会を得て(AB(アーキテクト/ビルダー「建築の設計と生産」)研究会)、斎藤公男、安藤正雄、そして広田直行らとともに、建築の生産と設計をめぐる様々な問題について議論してきている。まず問題となったのは「新国立競技場」の設計者選定、設計施工をめぐる問題である。続いて「デザインビルド」そして「公共建築の設計者選定(コンペ)」の問題である。
また,AB研究会では,若手建築家シリーズと称して以下のような議論を続けてきた。
01「建築家が生産や流通にいかに関わるのか」「PERSIMMON HILLS architects」柿木佑介+廣岡周平/第20回・2021/05/22開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:種田元晴、浅古陽介
02「o+h onishimaki+hyakudayuki architects」大西麻貴+百田有希「近作をめぐって」/第23回・2021/10/09開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:長谷部勉、山本想太郎
03「VUILD」秋吉浩気「デジタル・ファブリケーションと『建築家の解体』」/第25回・2022/04/02開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:小笠原正豊、伊礼智、木藤阿由子
04「Eureka」稲垣淳哉+佐野哲史+ 永井拓生+堀 英祐「コレクティブな建築をめざして」/第28回・2022/10/15開催 コーディネーター:香月真大
05「株式会社 COA 一級建築士事務所/ Chosokabe Okano Architecture」岡野道子+長曽我部亮「」/第29回・2023/04/01開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:赤松佳珠子
06「工藤浩平建築設計事務所」工藤浩平「「造り方」のマネジメントとは何か」/第30回・2023/05/20開催 コーディネーター:小笠原正豊 コメンテーター:難波和彦
07「MARU。architecture」高野洋平+森田祥子「近作について」/第33回・2023/08/26開催 コーディネーター:香月真大
08「中川エリカ建築設計事務所」中川エリカ「近作について」/第34回・2023/09/16開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:西田司、柿木佑介
09「miCo.」今村水紀+篠原勲「近年の仕事について」/第35回・2024/06/22開催 コーディネーター:香月真大 コメンテーター:青井哲人
10「再生建築研究所 | SAISEI LABORATORY」神本豊秋「再生建築研究所の現在の活動」/第37回・2024/07/27開催 コーディネーター:香月真大
11 「D造形研究所」渡辺菊眞 高橋俊也「地域-地球型建築の設計手法 空と地をむすぶ建築」/第39 回 2025/05/31開催 コーディネーター 布野修司
12 「ALTEMY 一級建築士事務所」津川恵理「都市と建築に身体性を取り戻す」/第40 回 2025/07/26開催 コーディネーター 山本至 コメンテーター:香月真大、柿木佑介
13 「ULTRASTUDIO」向山裕二「象徴・装飾・風景」/第41回 2025/10/25開催/コーディネーター 山本至 コメンテーター:畠山鉄生(アーキペラゴアーキテクツスタジオ)
14 「awn」江島史華「関係性を編み直す装置としての建築」/第43回 2026/03/21開催 コーディネーター 山本 至 コメンテーター 青井哲人
15 「明治大学」門脇 耕三「戦後住宅は「ポスト戦後住宅」へと再編可能か」/第44回 2026/05/16開催 コーディネーター 安藤正雄 コメンテーター 渡邊 大志(早稲田大学 )
16 「PEAKSTUDIO」藤木俊大「COMMON SENSEを生み出す場づくり」/第45回 2026/07/25開催 コーディネーター 山本 至 :コメンテーター 一ノ瀬彩(茨城大学)
「建築家Xたち」シリーズは,以上の流れに沿った企画である。




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